ねぇねぇ、相続って預金や不動産などが主になると思うんだけど、ペットも相続の対象になるのかな?
ペットと相続の関係についてですね。
それでは今回は「ペットに遺産を相続させることはできるのか」、「ペットに相続税はかかるのか」といった疑問に答えていきましょう。
突然ですが、実は今、子どもの数よりもペットとして飼われている犬・猫の方が多いのはご存知でしたか?
え!そうなの?
2022(令和4)年現在、ペットの犬は705万3千頭、ペットの猫は883万7千頭で合計1,589万頭です(一般社団法人ペットフード協会の全国犬猫飼育実態調査 結果)。
対して、同じ時点における日本の15歳未満の子どもの数は1,465万人です(国勢調査及び人口推計)。
少子化が顕著に表れていますが、ペットも家族の一員であるとのことでペットを飼育するご家庭が多いですね。
ちなみに上記はペットとして飼われている犬・猫だけですので、野良猫やうさぎ・ハムスターなどの小動物は含まれていません。
そう考えると、ペットを飼育しているご家庭はもっと多いことになります。
ペットと相続は意外と身近な問題でもあるのです。
目次(各項目に飛べます)
ペットに遺産を相続させることはできません
ペットは家族同然といえる存在ですから、出来ることならペットに遺産を残してあげたいと思う気持ちは分かります。
ただし残念ですが、今の日本の制度上、ペットに遺産を相続させることはできません。
なぜならば、法律上ペットは「動産(つまり、物)」として扱われ、法律行為(遺産分割協議など)ができないためです。
したがって、ペットは相続する方ではなく、相続される方(相続財産)となります。
仮に、遺言書に「○○(ペットの名前)に自宅を相続させる」と書かれていたとしても、ペットは遺産を相続することができないため、その内容は無効となってしまいます。
ペット「のため」に遺産を相続させることはできます
上記のとおり、ペットに直接遺産を相続させることはできませんが、ペット「のため」に遺産を遺すことはできます。
その方法を3つご紹介します。
負担付遺贈
言葉が難しいのですが、簡単に言えば
「ペットの世話をし続けることを条件に、世話をしてくれる人に遺産を相続させる」
ことを指します。
遺産を相続するのは「ペット」ではなく「人」になるのですが、「遺産を相続させる代わりにペットの世話をよろしくね」という条件を遺言で付すことができます。
この場合、遺言書には下記の内容を記しておくと良いです。
- 遺贈する「対象者」
- 遺贈する「財産の内容」
- 対象者に「何を依頼するのか」
- 「遺言執行者」
このように負担付遺贈によって、自分の死後のペットの世話をお願いすることができます。
しかし、この方法にはデメリットがあります。
え、なになに?
負担付遺贈は遺言を基にしています。
ということは、ペットの世話をお願いされた人は相続放棄して断ることもできます。
遺言はあくまでも被相続人からの一方方向のメッセージに過ぎないという性質を持つためです。
ペットのことをお願いするために負担付遺贈を考えて遺言書を書いたとしても、断ることができたのでは願いを叶えることはできません。
ペットの世話をお願いしたい人とは生前に合意を取っておくことと、遺言執行者を決めておくことが大切です。
遺言執行者を決めておくことで、仮にペットの世話を放棄している場合には遺言執行者は裁判所に負担付遺贈の内容を撤回して、遺言執行者が指定した別の人に遺産を相続させることができます。
上記の相続放棄して断ることができるというデメリットをなくす方法が、次の「負担付死因贈与」です。
負担付死因贈与
こちらも一見すると言葉が難解です。
簡単にいえば
「現在の飼い主が死亡したことを起因として、ペットの世話をし続けることを条件に、世話をしてくれる人に財産を贈与する」
ことを指します。
内容としては、「負担付遺贈」と似ていますが、上記と違う点は、契約であるためお互いの合意があるという点です。
贈与は、贈与する側と贈与される側がお互いに「あげます」「もらいます」の意思表示(合意)を前提とします。
そのため、引き継ぐ側が拒否するという可能性がありません。
贈与契約は口頭でも成立しますが、口頭での贈与契約は後から立証することが難しく、言った言わないのトラブルの種になりますので、贈与契約書という書面で残すことが何より大切です。
この場合、贈与契約書には下記の内容を記しておくと良いです。
- 贈与する「対象者」
- 贈与する「財産の内容」
- 対象者に「何を依頼するのか」
- 「死因贈与執行者」
負担付遺贈と同じく、贈与された人が贈与契約書どおりにペットの世話という義務を果たしているかどうか監視する役として、死因贈与執行者を決めておくことが後々のトラブルを防ぐ意味で重要です。
ペット信託
最近できた取り組みで徐々に人気を出しつつあるのがペット信託です。
信託とはその言葉のとおり、「信」じて「託」す、です。
「ペットの世話をしてもらうために信託機関に財産を預かってもらい、信託機関が新しい飼い主に預かっていた財産を渡す」
ことを指します。
まだまだ新しい取り組みのため、対応できる機関は少ないのですが、次のような機関がペット信託を利用できます。
NPO法人ペットライフネット「わんにゃお信託®」
NPO法人サンタの家(行政書士もんりつ事務所)「ペット見守り信託契約」
遺言書がない場合はどうなるのか
遺言書などやペット信託がない場合は、相続人同士で話し合い(遺産分割協議)をして誰がペットを相続するか(今後の世話をするか)を決める必要があります。
その際にトラブルを生まないための方法は、ペットを相続する(世話をする)人に対して、これから発生する飼育代分の金銭を多めに相続させることです。
ペットも人間と同じでいつ病気するか分かりませんし、怪我などをすれば動物病院にかかる機会も増えるでしょう。
ただ、人間と違うのはペットの診察・治療には社会保険は使えませんので全額自己負担となります。
亡くなった方が大切に育ててきたペットですので、相続人全員で見守っていくことが大切です。
ペットを相続すれば相続税はかかるのか
最後に、亡くなった方から負担付遺贈や負担付死因贈与でペットの世話を託された場合に相続税がかかるかどうかについて解説いたします。
ペット自体に相続税はかかりません
ペット自体を相続しても相続税がかかる(増える)ことは、ほとんどのケースでありません。
実際にペット(犬・猫など)が相続税申告書に載っているのは皆さんも見たことがないはずです。
相続税申告を行う場合には、国税庁の「財産評価基本通達」に沿って相続財産の評価を行います。
これには動物の評価方法も定められており、
ペットは「実際に取引される売買価格や専門家の鑑定額」によって評価します。
ですが、ほとんどの場合ペットに売買価格はつかず、相続税申告上は「財産価値なし」として相続税申告書に載ってこないということがほとんどです。
ペットの世話と引き換えにもらった財産には相続税がかかります
ペット自体に相続税はかかりませんが、上記でご紹介した「負担付遺贈」「負担付死因贈与」で財産を譲り受けた場合は、その財産に対して相続税がかかります。
ちなみに、負担付死因贈与は名前に「贈与」と入っていますが、贈与者が亡くなったことに起因して実行される性質のため、贈与税ではなく相続税の対象になります。
死因贈与ではない、負担付贈与の場合は贈与税の対象となりますので注意です。
財産評価を行う際には、贈与者が亡くなった時点で財産評価を行います。
現金や預金であれば分かりやすいですが、売却して換金を目的に有価証券や不動産を譲り受けていた場合は、換金前の状態で評価を行うことに注意です。
まとめ
今回はペットと相続について解説いたしました。
まずは自分の死後、愛するペットを誰に託すか考えることから一歩が始まります。
ペットは自分で餌を補充して食べることも水を飲むこともできないため、ペットの相続を考えることも飼い主の義務ともいえます。
今回ご紹介したこの記事が皆さんの愛するペットを助ける一助になれれば幸いです。
弊事務所では1人1人のお客様に真摯に寄り添い、満足度の高い相続税申告やコンサルティングを実施しております。
相続税申告の見積りや初回相談は無料で行っております。
まずは、お問い合わせページからご連絡をお待ちしております。
福岡県那珂川市・春日市の公認会計士・税理士 河鍋 優寛でした。
この記事の執筆者
公認会計士・税理士
大学4年次に公認会計士試験合格後、大手監査法人と税理士法人を経て、河鍋公認会計士・税理士事務所を開業。
資産税(相続税・贈与税・譲渡所得)の実務経験もあることから、会計顧問から資産税までご相談いただけます。
専門分野は会計、税務顧問・IPO支援&相続・事業承継です。