2025.02.05

【税制情報】設備投資減税や賃上げ促進税制について

今回のコラムは「設備投資減税や賃上げ促進税制」についてです。

令和7年度税制改正、設備投資減税は賃上げ要件がセット

昨年12月20日に出た与党の「令和7年度税制改正大綱」やその後に出た各省庁の資料では、「賃上げをしない企業は、設備投資減税を認めない」と思わせる改正が2つありました。

① 先端設備導入による固定資産税特例

固定資産税の課税標準を引き下げる減税特例は2年延長されましたが、賃上げを後押しするため、「1.5%以上」の賃上げが義務づけられました。

■現行制度
賃上げ率
・1.5%以上→4年間または5年間「価格の1/3」に優遇
・1.5%未満→3年間「価格の1/2」

■改正案
賃上げ率
・3%以上→5年間「価格の1/4」に優遇(引上げ)
・1.5%以上→3年間「価格の1/2」(引下げ)
・1.5%未満→対象外

1.5%以上は「中小企業の賃上げ促進税制(通常部分)」と同じ水準を要求したものとなっています。

なお、大綱では従業員への「賃上げ表明」に関する記載がありませんでしたが、経済産業省の説明資料では「雇用者全体の給与が増加することを従業員に表明するもの」とあり、特に変更はないと考えられます。

② 中小企業経営強化税制のB類型の拡充措置

もう1つ、売上高100億円の企業を創出するため、工場や店舗等の建物も含めた設備投資減税がB類型に追加されます。

この「建物」で減税を受けるためには「賃上げ」が必須となっています。

■改正案
 賃上げ率
・5%以上→特別償却25%/税額控除2%
・2.5%以上→特別償却15%/税額控除1%
・2.5%未満→対象外

2.5%以上は「中小企業の賃上げ促進税制(上乗せ措置)」と同じ水準を要求したものとなっています。

▼詳しくはこちらから
【PDF】経済産業省「令和7年度(2025年度)経済産業関係 税制改正について」4・10ページ
https://www.meti.go.jp/main/zeisei/zeisei_fy2025/zeisei_fy2024/zeiseikaiseigaiyou2025.pdf

会計検査院が「賃上げ促進税制の教育訓練費の上乗せ措置」に意見

1月15日、会計検査院は「賃上げ促進税制」のうち「教育訓練費の上乗せ措置」について、「課税の公平原則から逸脱した措置」として、経済産業省と財務省に対して問題点を指摘しました。

一般的な法人税の減税では
・適用要件となる支出
・税額控除の計算根拠となる支出
の2つは、同じものが使われます。

例えば中小企業投資促進税制なら「機械装置の取得価額」が使われ、

・適用要件となる支出
⇒取得価額が1台160万円以上なら要件を満たす

・税額控除の計算根拠となる支出
⇒取得価額×7%を税額控除

というように同じものを使います。

今回問題となった「教育訓練費の上乗せ措置」は

・適用要件となる支出
⇒「教育訓練費」の増加額

・税額控除の計算根拠となる支出
⇒「給与」の増加額

と、異なる支出を元にする「他に例のない仕組み」となっています。

結果、少しの教育訓練費の増加で要件を満たし、その増加額を大きく上回る税額控除額ができる点を会計検査院は問題視しました。

<事例>
・教育訓練費増加額:約5万円
・税額控除額:約1,058万円(201倍!)

次回の令和8年度税制改正で教育訓練費の上乗せ措置について見直しがあるのか、注目したいところです。

▼詳しくはこちらから
会計検査院「会計検査院法第30条の2に基づく国会及び内閣への随時報告(令和7年1月15日)」
https://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/7/r070115.html

まとめ

昨年12月20日に令和7年度税制改正大綱が出て、1月24日に第217回通常国会が召集されました。

今回は「少数与党」のため、令和7年度予算案の審議が焦点となり、予算案や税制改正大綱の内容の修正も選択肢になっています。

審議状況によっては基礎控除や給与所得控除がさらに引き上げられ、「123万円の壁」よりさらに高くなる可能性もあります。

カワセミ

遅くとも3月末の税制改正法律案の成立までには、一定の結論が出ていると考えられます。

金額の壁、もっと上がれ~!!

改正の結果を踏まえ、パートタイマーやアルバイト(特に学生バイト)を含む従業員の柔軟な勤務時間の導入や給与体系の見直しをすることで、長期的に人材を確保できる環境を整えていきたいところです。

河鍋 優寛

弊事務所では1人1人のお客様に真摯に寄り添い、満足度の高い相続税申告やコンサルティングを実施しております。
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福岡県春日市・那珂川市の税理士・公認会計士 河鍋 優寛でした。

この記事の執筆者

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