今回のコラムは「103万円の壁を含めた最新の税制情報」についてです。
目次(各項目に飛べます)
103万の壁対策を含めた総合経済対策が閣議決定
11月22日、政府は「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」を閣議決定しました。
この中では国民民主党の最重要要望項目である下記の2つが明記されました。
- 「103 万円の壁」については、令和7年度税制改正の中で議論し引き上げる。
- 「ガソリン減税(いわゆる暫定税率の廃止を含む)」については、自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し、結論を得る。
昨年は、税制改正大綱の公表直前に国民民主党が要望したガソリン減税の記載が削除されるという出来事もありました。
今年は国民民主党が選挙で大躍進を遂げるなど状況も変わっており、どのように大綱に表現されるのか注目したいところです。
その他、総合経済対策の中に書かれた税制改正に関連する項目は次のとおりです。
- 中小企業の成長投資・生産性向上投資・省力化投資等の一体的な支援
- 地域未来投資促進税制の活用促進
- 事業承継税制の特例措置における役員就任要件等の見直しの検討
- 売上100億超への成長を目指す中小企業への設備投資支援
- エンジェル税制、スタートアップ再投資非課税措置の拡充
- NISAのさらなる利便性向上、NISAの対象範囲の拡充
- iDeCoの加入年齢引き上げ、拠出限度額の引上げ、手続税簡素化
▼詳しくはこちらから
内閣府「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」
https://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/keizaitaisaku.html
また、帝国データバンクが11月14日に公表したアンケートでは、103万円の壁の引き上げに「賛成」が約7割で、「撤廃すべき」を含めると「9割」の企業が見直しを求めるものとなっています。
▼詳しくはこちらから
帝国データバンクは
「「103万円の壁」引き上げに対する企業アンケート」
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20241114-1-03mwall/
会計検査院が「自社株評価」の検討を求める検査報告を公表
11月6日、会計検査院は「令和5年度決算検査報告」を公表しました。
その中で「自社株評価」の評価方法について
- 類似業種比準方式
- 純資産価額方式
- これらの併用方式
- 配当還元方式
を比較し、「類似業種比準方式や配当還元方式が純資産価額方式に比べて評価額が低いままになっている点」を指摘しています。
マンション評価通達の改正(いわゆるタワマン節税封じ)のように、令和7年度税制改正大綱で方向性が示され、年明けから議論が行われて通達改正される可能性もあります。
自社株評価は相続・事業承継対策に大きな影響が出るので、まずは大綱に注目したいところです。
▼詳しくはこちらから
【PDF】会計検査院「13.相続等により取得した財産のうち取引相場のない株式の評価(特定)」
https://www.jbaudit.go.jp/report/new/summary05/pdf/fy05_tokutyou_13.pdf
過度な社会保険料削減にメスが入る?
11月21日、厚生労働省の会議で「被用者保険の適用拡大及びいわゆる「年収の壁」への対応について」という資料が公表されました。
この中で、毎月の役員報酬をおさえ、事前確定届出給与で多額の賞与を支払うことで社会保険料を削減する方法(いわゆる「社会保険料削減スキーム」)が問題視されています。
今回の資料では、社会保険料削減スキームを利用していると思われる人数が「令和2年から令和5年の間で約1.6倍に増加している」という具体的なデータも示されています。
社会保険料の106万円/130万円の壁への対応と同時に、このような過度な社会保険料削減に待ったがかけられる可能性があります。
▼詳しくはこちらから
厚生労働省「第186回社会保障審議会医療保険部会資料」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45733.html
流行る節税スキームは対策が施されるため、税制改正はいたちごっこや後出しじゃんけんとも呼ばれます。。
まとめ
今年も税制改正のシーズンがやってきて、連日、税に関する話題が報道されています。
今回は例年と異なり、少数与党のため、国民民主党の要望を取り入れて議論が行われ、従来より多くの調整が必要となっています。
「103万円の壁」の引上げ、ガソリン減税のあり方、防衛増税の開始時期
など、今後も調整の難航が予想されます。
例年どおり「12月中旬」をめどに与党の税制改正大綱がまとまるのか、それとも遅れるのか、注目したいところです。
今後も税制改正に重要な話題をお届けしていきます。
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福岡県春日市・那珂川市の税理士・公認会計士 河鍋 優寛でした。
公認会計士・税理士
大学4年次に公認会計士試験合格後、大手監査法人と税理士法人を経て、河鍋公認会計士・税理士事務所を開業。
資産税(相続税・贈与税・譲渡所得)の実務経験もあることから、会計顧問から資産税までご相談いただけます。
専門分野は会計、税務顧問・IPO支援&相続・事業承継です。