
今回のコラムは「2023年度査察白書」についてです。
2023年度査察白書によりますと、すでに着手した査察事案について、同年度中に告発の可否を最終的に判断(処理)した件数は151件あり、このうち検察庁に告発した件数は66.9%(告発率)にあたる101件となりました。
告発率66.9%は、前年度を7.2ポイント下回りましたが、ここ数年は70%台の高水準で推移していることから、査察の対象になると、7割程度が実刑判決を含む刑事罰の対象となっております。
査察(いわゆるマルサ)とは、大口・悪質な脱税をしている疑いのある者に対し、犯罪捜査に準じた方法で行われる特別な調査をいいます。
国税査察官には、裁判官の発する許可状を受けて事務所などの捜査をしたり、帳簿などの証拠物件を差し押さえたりする強制捜査を行う権限が与えられます。
この査察調査は、単に免れた税金や重加算税などを納めさせるだけでなく、検察への告発を通じて刑罰を科すことを目的としております。
刑罰とは懲役や罰金をいいますが、1980年に初めて実刑判決が出されて以降は、毎年実刑判決が言い渡されております。
同白書によると、同年度中に一審判決が言い渡された83件のすべて(100.0%)に有罪判決が出され、うち9人に対し実刑判決が言い渡されております。
実刑判決で最も重いものは、査察事件単独に係るものが懲役4年、他の犯罪と併合されたものが懲役6年でした。
例えば、輸出物品販売場の許可を受けたドラッグストアにおいて、外国人旅行者に化粧品等を販売したように装い、架空の輸出免税売上を計上することで、不正に消費税の還付を受け、又は受けようとした法人の代表者に懲役4年、不正加担者に懲役3年の実刑判決が出されました。
一審判決があった83件の1件当たり平均の犯則税額は5,800万円、懲役月数は15.6ヵ月、罰金額は1,500万円でした。
査察の対象選定は、脱税額1億円が目安といわれ、脱税額や悪質度合いの大きさが実刑判決につながります。
査察で告発されると、社会的信用を失うだけでなく、巨額な罰金刑や実刑判決が出る可能性もあります。
ちなみに、刑罰は10年以下の懲役、罰金は1,000万円(脱税額が1,000万円を超える場合は、脱税相当額)以下となっております。

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福岡県春日市・那珂川市の税理士・公認会計士 河鍋 優寛でした。
この記事の執筆者

公認会計士・税理士
大学4年次に公認会計士試験合格後、大手監査法人と税理士法人を経て、河鍋公認会計士・税理士事務所を開業。
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