
今回のコラムは「使い勝手よい適格現物分配」についてです。
目次(各項目に飛べます)
組織再編制度としての現物分配
法人が株主に対し、配当により金銭以外の資産を交付することを会社法では現物配当と呼びますが、法人税法はこれを、現物分配と規定し組織再編行為としています。
その結果、現物分配は、組織再編による資産の譲渡と認識されることになります。
また、100%完全支配関係での現物分配は適格現物分配と規定され、適格現物分配での資産の移転価額は、移転直前の帳簿価額に拠るものとされ、譲渡損益は生じないことになっています。
配当の仲間から排除しての益金不算入
適格現物分配は、法人税法上、受取配当金の仲間から除外されています。
その結果、完全子法人株式・関連法人株式に係る配当計算期間における継続保有規定での適用制限要件から解放されています。
さらに、適格現物分配は、所得税法上の配当所得からも除外され、その結果、配当所得に係る源泉徴収の対象から除外されてもいます。
なお、適格現物分配は、利益積立金の増加項目として政令に特記されています。
会計上収益計上されている受取配当金は、従って実務的には、法人税申告書別表四において「適格現物分配に係る益金不算入額」として減算・社外流出処理をすることになります。
適格現物分配と継続要件
組織再編税制における適格要件では、100%の持株関係という完全支配関係の継続が見込まれていること、と規定されるものが多いのですが、適格現物分配制度では、現物分配を行う直前での完全支配関係だけで十分で、継続要件は置かれていません。
現物分配と消費税
現物分配は、配当という手段で不動産や株式などの金銭以外の資産を交付することなので、資産の譲渡の概念に含まれる、と言えます。しかし、資産の譲渡の概念に含まれるとしても、必ずしも消費税の課税対象になる、というわけではありません。
対価を得て行う事業行為であれば消費税の課税対象となる資産の譲渡等に該当することになりますが、
現物分配は株主の地位に基づく、出資への謝礼として分配されるものなので、消費税法上の資産の譲渡等には該当せず、不課税となります。

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福岡県春日市・那珂川市の税理士・公認会計士 河鍋 優寛でした。
この記事の執筆者

公認会計士・税理士
大学4年次に公認会計士試験合格後、大手監査法人と税理士法人を経て、河鍋公認会計士・税理士事務所を開業。
資産税(相続税・贈与税・譲渡所得)の実務経験もあることから、会計顧問から資産税までご相談いただけます。
専門分野は会計、税務顧問・IPO支援&相続・事業承継です。