
今回のコラムは、最新の税務情報や税制改正項目のうち、経営者に重要なトピックについてご紹介します。
目次(各項目に飛べます)
与党から「令和8年度税制改正大綱」が公表
12月19日、自由民主党と日本維新の会から「令和8年度税制改正大綱」が公表されました。
主な改正項目は次のとおりです。
(減):減税、(増):増税
※一部トピック2、3で紹介
【個人所得税】
(減)所得税の課税最低限が年収178万円(+18万円)に
- 所得税の基礎控除:最大104万円(+9万円)に
- 給与所得控除の最低保障額:74万円(+9万円)に
- 配偶者控除・扶養控除の所得要件は所得62万円(年収136万円)以下に
(減)住宅ローン控除は5年延長
- 新築:令和10年から省エネ基準適合住宅や
- 災害レッドゾーンにある住宅を対象外
- 中古:借入限度額を拡充、控除期間13年に
(減)NISAのつみたて投資枠
- 0歳以上から投資可能に(年60万円・計600万円)
(減)暗号資産が20%分離課税に
- 「国民の資産形成に資する暗号資産」が対象
(減)セルフメディケーション税制
- スイッチOTC医薬品は恒久化、それ以外は5年延長
(減)マイカー通勤手当の非課税限度額の見直し
- 新しい距離区分の新設(上限66,400円)
- 月5,000円までの駐車場代も非課税の対象に
(減)従業員への食事支給に係る非課税限度額の引上げ
- 企業負担額が月7,500円(税抜)に
(増)「1億円の壁」の対象者拡大
- 株式や不動産の売却益が3.3億円超は追加負担発生
(増)ふるさと納税の上限設定
- 給与収入1億円相当の人が対象
(増)防衛特別所得税の創設
- 令和9年分から所得税×1%の新たな付加税
- 復興特別所得税は1%引き下げて10年延長
【資産税】
(減)事業承継税制の承継計画の提出期限の延長
- 法人版は令和9年9月30日まで延長 ※適用期限(令和9年12月31日)は延長なし
(減)特定資産の買換え特例
- 3年延長
(増)教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
- 令和8年3月31日で廃止
【法人税】
(減)中小企業者等の少額減価償却資産の特例
- 30万円未満を「40万円未満」に引上げ
- 対象法人を「従業員数400人以下」に縮小
(減)大胆な設備投資を促進する投資減税が創設
- 大企業35億円、中小5億円以上の設備投資を想定
- 建物を含め即時償却や税額控除が可能
(減)研究開発税制の拡充
- AI・量子などの分野への優遇措置が新設
- 中小企業は3年間の繰越控除が可能に
(増)賃上げ促進税制の見直し
- 大企業は令和7年度までで廃止
- 中堅企業も令和8年度までで廃止
- 中小企業は教育訓練費の上乗せ措置を廃止
(増)企業グループ間取引の書類保存義務の創設
- グループ取引の根拠資料の作成・保存義務が発生
▼詳しくはこちらから
自由民主党・日本維新の会 【PDF】「令和8年度税制改正大綱」
https://storage2.jimin.jp/pdf/news/policy/212129_1.pdf
貸付用不動産を利用した節税スキームに税制改正
今回の大綱では、相続開始から5年以内に買った貸付用不動産について、評価額が低くなる路線価等ではなく、「購入価額の8割」で評価するという改正が含まれています。
また、いわゆる「不動産小口化商品」について、買った時期にかかわらず、「通常の取引価額」で評価するという改正も同時に行われます。
これらの改正は、原則として、「令和9年1月1日以後」に相続等で取得をする財産の評価から変わります。
今後、夏から秋にかけて改正の詳細が公開され、意見募集(パブリックコメント)が行われると思われます。
令和6年から開始したタワーマンションの評価通達に続き、過度な節税対策を封じる見直しが追加されました。
大綱では、今後の検討課題の1つに不動産価格高騰で投機的取引となっている「新築マンションの短期売買」を挙げており、来年度以降も何らかの見直しが入りそうです。
インボイス制度の経過措置に見直し
今回の大綱では、インボイス制度の定着に向け、事務負担の配慮がより必要と考えられる「個人事業者」に限り、令和9年・10年に「3割特例」が認められます。
現在は売上税額の2割を納税する「2割特例」がありますが、売上税額の3割の納税になります。
この見直しは、「法人は対象外」のため、法人は2割特例が使える期間が終了した後は、基本的には簡易課税を選択することになります。
また、免税事業者等からの仕入れについて、当初の3年間は8割、その後の3年間は5割の控除が認められています。
こちらは期限が2年延長され、7割控除(2年間)、5割控除(2年間)、3割控除(1年間)と段階的に下がる仕組みとなります。
取引先との取引の際にご注意ください。
まとめ
令和8年度税制改正では、前年に続いて「年収の壁」の引上げに与野党の協議で時間をかけました。
基礎控除と給与所得控除の「本則部分」は、今後、「見直し前の控除額」に「直近2年間の消費者物価指数(総合)の上昇率」を乗じて調整されます。
令和8年分は「上昇率6.0%」を反映しましたが、次回は令和10年と「偶数年」に見直しが行われます。
配偶者控除や扶養控除の所得要件も変わるため、2年ごとにアップデート(更新)が必要です。
また、今回はマイカー通勤手当や食事支給の非課税限度額が見直されます。
いずれも従業員の手取りを増やすための改正であり、この機会に、給与規程や福利厚生制度の見直しを検討してはいかがでしょうか。

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福岡県春日市・那珂川市の税理士・公認会計士 河鍋 優寛でした。
この記事の執筆者

公認会計士・税理士
大学4年次に公認会計士試験合格後、大手監査法人と税理士法人を経て、河鍋公認会計士・税理士事務所を開業。
資産税(相続税・贈与税・譲渡所得)の実務経験もあることから、会計顧問から資産税までご相談いただけます。
専門分野は会計、税務顧問・IPO支援&相続・事業承継です。