今回のコラムは「キャピタルフライトによる金利上昇」についてです。
金利が上昇傾向にあります。
日銀が描く金利上昇シナリオは、賃金と物価がともに上昇するインフレで「経済の好循環」を実現させることで、企業の資金需要が活発化し、金利が上昇するというものです。
これは「良い金利上昇」といっていいでしょう。
よい金利上昇の下では、GDPも個人所得も増加していますから、高金利が逆風になる経済主体も金利上昇に耐えられると想定されます。
一方、「悪い金利上昇」の危険性もあります。
それは景気が停滞したまま、企業の資金需要は回復せず、マネーの供給源である国内貯蓄が減少することにより生じます。
政府の財政赤字は拡大が必至ですから、その資金需要を国内貯蓄で賄えなければ、金利は上昇するでしょう。
これは景気低迷下での金利上昇ですから、経済にかなり厳しい打撃を与えます。
では、どういう場合に国内貯蓄は減少するのか、考えてみます。
政府が財政赤字を賄うために国債を発行すると、政府は資金を手にします。
その後の取引がクローズドの国内取引に終始すれば、その資金が誰のものになろうと、国内で移動するだけですから、国内貯蓄は減りません。
しかし、そこに、国外相手の取引が加わると、国内貯蓄は減少する可能性があります。
その資金漏出ルートとして、以下の3つが考えられます。
第一は国レベルです。
国債発行で手にした資金で、政府は様々な施策を行いますが、国民に対して医療や社会保障の支出をしたり、国内事業者に公共投資を発注したりしている限り、資金は国内に留まります。
しかし、海外から物品を購入すれば、資金は海外に流れます。
政府は防衛費を増やし外国製兵器購入を予定していますから、このルートの資金漏出は拡大することが予想されます。
第二は企業レベルです。
海外から製品を購入すれば、資金は出ていきます。
その流出を補う輸出の増加があればいいのですが、最近は以前ほど輸出の伸びが顕著ではありません
近年は、エネルギーや食料等の輸入拡大で貿易赤字が拡大する傾向にあります。
そして、最後に、今最も注目されるのが、個人レベルでの貯蓄流出です。
個人が国内で預金をし続ける限り、国内貯蓄は減りません。
これまではどんなに金利が低くなっても、個人貯蓄が減らず、日本の低金利を下支えしていました。
その原因は日本人の保守性もあるでしょうが、経済的合理性もありました。
というのは、デフレ下ではどんなに金利が低くても、消費するより貯蓄の方が有利だったことに加え、諸外国の金利も日本ほどではないにしても相当低かったからです。
しかし、その状況は劇的に変わっています。
今、日本は数十年ぶりのインフレですから、ゼロ金利では預金の実質的価値は目減りしていきます。
また、アメリカをはじめとした海外主要国はインフレ抑止のために金融引き締めに転じていますから、日本よりはるかに高い金利をつけるようになっており、低金利を継続している日本から見ると海外の金利は魅力的に映ります。
確かに為替リスクは存在しますが(リスクは為替の動向次第では利益に転じることもあります)、個人が国内貯蓄に見切りをつけ、海外に資金を流出させようとする動きが出てくるかもしれません。
これが、いわゆる「キャピタルフライト」です。
第一と第二のルートは必要なモノを買うことに伴い発生する資金流出ですから、限度があります。
ところが、キャピタルフライトは投資(あるいは投機)ですから、個人の思惑次第でいくらでも膨らみます。
現在はキャピタルフライトが顕在化しているという状況ではありませんが、日本人は同調性が高い国民といわれていますから、いったん火が付くと意外に大きなうねりとなるかもしれません。
そうなると、貯蓄不足から追い込まれての金利上昇といった事態になることが懸念されます。
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福岡県春日市・那珂川市の税理士・公認会計士 河鍋 優寛でした。
この記事の執筆者
公認会計士・税理士
大学4年次に公認会計士試験合格後、大手監査法人と税理士法人を経て、河鍋公認会計士・税理士事務所を開業。
資産税(相続税・贈与税・譲渡所得)の実務経験もあることから、会計顧問から資産税までご相談いただけます。
専門分野は会計、税務顧問・IPO支援&相続・事業承継です。