
今回のコラムは「中小企業における省力化投資による設備投資対応」についてです。
(株)日本ビジネスプランの記事をご紹介します。
わが国において将来的な就業者数の減少が予測されている中、人手に依存しないオペレーションの構築と、そのための設備投資といった取組みにより、人手不足に対応していくことが求められます。
中小企業庁編「中小企業白書2024年版」では、中小企業を対象としたアンケートに基づいて、人手不足対応を目的とした設備投資の現状と課題について整理しています。
まず、人手不足対応を目的とした設備投資について、直近5年間での実施有無を確認したところ、約35%の企業が「実施した」と回答しています。
次に人手不足対応を目的とした設備投資の実施有無別に、売上高・経常利益率の変化率をみると、「実施した」と回答した企業では、「実施していない」と回答した企業に比べ、売上高及び経常利益のプラスの変化率が高くなっています。
この結果から人手不足対応を目的とした設備投資の実施が、業績の向上に寄与している可能性が示唆されています。
人手不足対応を目的とした設備投資の効果について回答割合の高い順にみると、「人手不足の緩和(51.6%)」、「残業時間の削減(39.7%)」、「コストの削減(36.9%)」となっています。
さらに、人手不足対応を目的とした設備投資の検討における課題について、「特にない」と回答した企業を除いて回答割合の高い順にみると、「業務の標準化が難しい(25.1%)」、「投資効果が不明(21.5%)」、「導入のための資金が足りない(19.8%)」となっており、様々な課題が挙げられていることが分かります。
このように省力化投資は人手不足の緩和だけでなく、業務効率化による売上増加や業務時間の削減などにより様々な取組みが行える可能性もあるなど、多様な効果が期待されるのです。
では、中小企業における省力化投資による設備投資においては具体的にどのような取組みが行われているのでしょうか。
そこで、中小企業庁編「中小企業白書2024年版」において、積極的な設備投資により生産性向上と職場環境の改善を実現した企業の事例として紹介された中工精機株式会社(本社所在地:岐阜県瑞浪市)の取組みについてみていきましょう。
中工精機株式会社は、 地場産業である窯業の原料となるセラミックスの粉砕・精製機等を製造する企業です。
同社の社長は、ニッチな分野で顧客に頼られる「オンリーワン企業」を目指し、顧客の細かな要望に応えるために「100%内製化」を掲げて積極的な設備投資を継続しました。
同時に深刻さが増す人手不足にも対応すべく、作業工程の自動化、省力化の推進による生産性の向上や、人材確保に向けた職場環境の改善の観点も持ちつつ設備投資に取組んできました。
同社が投資戦略で重点を置いてきたのが、工場における機械設備のNC(数値制御)化、溶接工程などの自動化です。
NCの導入や自動化は、生産性の向上に顕著な効果を上げただけでなく、若手社員が製造現場で活躍できる機会を広げることにもつながりました。
さらに、NC化や自動化により業務プロセスの迅速化が進み時間外勤務が減少しました。
これらの設備投資も含めた職場環境改善の取組効果もあいまって、人材定着率の改善及び新たな人材の確保が進み、一時は不足感のあった従業員数も現在は適正な水準に回復しています。
このように、積極的な設備投資の中で省力化に向けた投資を行うことで、生産性の向上と職場環境の改善を実現するとともに、従業員の定着にもつなげることができるのです。

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福岡県春日市・那珂川市の税理士・公認会計士 河鍋 優寛でした。
この記事の執筆者

公認会計士・税理士
大学4年次に公認会計士試験合格後、大手監査法人と税理士法人を経て、河鍋公認会計士・税理士事務所を開業。
資産税(相続税・贈与税・譲渡所得)の実務経験もあることから、会計顧問から資産税までご相談いただけます。
専門分野は会計、税務顧問・IPO支援&相続・事業承継です。