
今回のコラムは「下請法の名称変更」についてです。
この度、下請法(下請代金支払遅延等防止法)が約20年ぶりに大改正され、2026年1月より「中小受託取引適正化法(取適法)」へと名称が変更され施行されます。
この改正は、サプライチェーン全体での価格転嫁を促進し、中小事業者の取引環境を根本的に改善することを目的としています。
目次(各項目に飛べます)
下請法改正の背景
近年、世界的な情勢変化を背景に労務費、原材料費、エネルギーコストが急激に高騰し事業者は大きなコストアップに直面しています。
この状況下で政府が掲げる「物価上昇を上回る賃上げ」を実現するためには各事業者が賃上げの原資を確保することが不可欠な課題です。
特に、中小企業をはじめとする多くの事業者が持続的に成長し賃上げに必要な原資を確保するためにはサプライチェーン全体でコスト上昇分を適切に反映させる「構造的な価格転嫁」を実現していくことが極めて重要となります。
従来から、取引価格の決定において、協議に応じないまま親事業者が一方的に価格を決定する行為など価格転嫁を阻害し、受注者である中小企業に不当な負担を押しつける商慣習が問題視されてきました。
このような不公正な商慣習を一掃し取引の適正化を強力に推し進めることによって価格転嫁をさらに促していくため今回の下請法改正が実施されました。
▼詳細は以下のリンクをご確認ください。
(中小企業庁)
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/2025/251014_01.pdf
2026年1月からの主な改正事項
2026年1月から施行される取適法の主な改正点は以下のとおりです。
① 運送委託の対象取引への追加(物流問題への対応)
深刻化する物流問題に対応するため新たに、発荷主が運送事業者に対して物品の運送を委託する取引が本法の対象に追加されます。
② 従業員基準の規模要件への追加(下請法逃れ等への対応)
親事業者の規模要件に、従来の資本金基準に加え、従業員数基準が新設されました。
具体的には、製造委託や修理委託などでは従業員数300人、役務提供委託などでは従業員数100人を超える場合も本法の対象となる区分が設けられ、下請法逃れの対策が強化されることになります。
③ 手形払等の禁止→支払遅延に該当
本法の対象となる取引において、手形による支払いが原則として禁止されます。
さらに、電子記録債権やファクタリングなどのその他の支払手段についても支払期日までに代金満額相当の現金を確保することが困難なものは支払遅延に該当する行為として禁止されます。
これは、中小企業の資金繰りを改善しキャッシュフローを安定化させるうえで非常に重要な措置です。
④ 協議に応じない一方的な代金決定の禁止(価格据え置き取引への対応)
昨今のコスト上昇局面で問題となっている価格据え置き取引に対処するため、親事業者が代金に関する協議に適切に応じないまたは必要な説明や情報提供を行わないことにより一方的に代金額を決定することが禁止されます。
これにより、公正な価格交渉の場が確保されるようになります。
⑤ 執行力の強化
公正取引委員会による執行に加え、事業所管省庁の主務大臣にも指導・助言権限が与えられ法の実効性が高められます。
また、省庁間の相互情報提供に関する規定も新設され、サプライチェーン全体での法執行体制が強化される見込みです。
まとめ
今回の下請法から「中小受託取引適正化法(取適法)」への改正は日本経済全体の成長の礎となる、中小企業の取引適正化と持続的な賃上げの実現を強力に後押しする大転換と言えます。
2026年1月の施行に向けて自社の取引慣行が新たな法令に適合しているかを確認し、コンプライアンス体制の構築を進める必要がございます。

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福岡県春日市・那珂川市の税理士・公認会計士 河鍋 優寛でした。
この記事の執筆者

公認会計士・税理士
大学4年次に公認会計士試験合格後、大手監査法人と税理士法人を経て、河鍋公認会計士・税理士事務所を開業。
資産税(相続税・贈与税・譲渡所得)の実務経験もあることから、会計顧問から資産税までご相談いただけます。
専門分野は会計、税務顧問・IPO支援&相続・事業承継です。