
今回のコラムは「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」についてです。
人手不足が続くなか、非正規雇用労働者の正社員化は、人材の定着や長期的な戦力確保につながる取り組みです。
「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」では、一定の要件を満たして有期雇用労働者等を正社員へ転換した事業主を支援しています。
そこで今回は、令和8年度の制度概要と見直しポイントを解説します。
目次(各項目に飛べます)
令和8年度キャリアアップ助成金(正社員化コース)とは
キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、有期雇用労働者等を正規雇用労働者へ転換した事業主に対して助成する制度です。
対象となる有期雇用労働者等とは、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者などの、いわゆる「非正規雇用労働者」を指します。
制度の概要
【1】助成金の金額
1人当たりの助成額は、正社員化前の雇用形態や「重点支援対象者」に該当するかによって異なります。
<有期雇用労働者から正社員へ転換>
・重点支援対象者:中小企業80万円、大企業60万円
・上記以外:中小企業40万円、大企業30万円
<無期雇用労働者から正社員へ転換>
・重点支援対象者:中小企業40万円、大企業30万円
・上記以外:中小企業20万円、大企業15万円
重点支援対象者には、雇入れから3年以上の有期雇用労働者や、一定の要件を満たす雇入れから3年未満の有期雇用労働者、派遣労働者、母子家庭の母等、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者などが該当します。
【2】助成金の加算額
一定の取り組みを行った場合には、1事業所当たり1回に限り、次の金額が加算されます。
(1)正社員転換制度を新たに規定し、転換等を行った場合
・中小企業:20万円
・大企業: 15万円
(2)多様な正社員制度を新たに規定し、転換等を行った場合
・中小企業:40万円
・大企業: 30万円
多様な正社員制度とは、勤務地限定正社員、職務限定正社員、短時間正社員のいずれか1つ以上の制度を指します。
(3)正社員への転換等に関する所定の情報を、自社のウェブサイトまたは職場情報総合サイト「しょくばらぼ」に公表した場合
・中小企業:20万円
・大企業: 15万円
【3】助成金の受給条件
受給するためには、主に次の3つの条件を満たす必要があります。
(1)キャリアアップ計画
正社員へ転換する前日までに「キャリアアップ計画」を作成し、管轄の労働局へ提出します。
(2)制度の規則化
正社員への転換制度を就業規則などに規定し、その制度に基づいて転換することが必要です。
(3)正社員転換
転換後6か月間の賃金を、転換前6か月間と比較して3%以上増額させる必要があります。
また、転換後は、正社員に適用される就業規則等が適用され、「賞与または退職金の制度」と「昇給」が適用されていることなども重要な要件となります。
▼詳細は以下のリンクをご確認ください。
(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html
令和8年度「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」の見直しポイント
1)「情報公表加算」の新設(令和8年4月8日~)
令和8年4月8日から「情報公表加算」が新設されました。
正社員への転換等に関する所定の情報を、自社で管理するウェブサイトまたは職場情報総合サイト「しょくばらぼ」に公表した場合、20万円(大企業は15万円)が加算されます。
加算を受けられるのは1事業所当たり1回のみで、正社員化の取り組みを外部へ公表することで、追加の助成を受けられる仕組みとなっています。
2)賃金3%以上増額要件の計算ルール見直し(令和8年10月1日以降適用)
令和8年10月1日以降に正社員転換等を行う場合、企業型確定拠出年金(選択型)の掛金運用額は、賃金3%以上増額要件の算定対象から除外されます。
掛金運用額は労働基準法や雇用保険法上の「賃金」に該当しないことなどを踏まえた見直しとなりますので、対象制度を導入している企業は、転換前後の賃金計算に注意しましょう。
まとめ
キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、非正規雇用労働者の正社員化を進めながら、企業の人材確保や定着を後押しする制度です。
正社員への転換前にキャリアアップ計画や就業規則、賃金の増額要件などを確認し、計画的に活用しましょう。
この記事の執筆者

公認会計士・税理士
大学4年次に公認会計士試験合格後、大手監査法人と税理士法人を経て、河鍋公認会計士・税理士事務所を開業。
資産税(相続税・贈与税・譲渡所得)の実務経験もあることから、会計顧問から資産税までご相談いただけます。
専門分野は会計、税務顧問・IPO支援&相続・事業承継です。