
今回のコラムは「開催が近づいてきているEXPO2025 大阪・関西万博」についてです。
2025年4月13日から10月13日まで開催される、万博の開催が近づいています。
5年前のオリンピックも今回の万博も、半世紀前、盛況を博した東京オリンピックと大阪万博の再来を期待してのものだったのですが、経済に与えるインパクトは前回とは大分様相を異にしています。
前回のオリンピックは1964年、万博は1972年開催で、高度経済成長真っ只中です。
オリンピックに間に合わせるように、東海道新幹線が開通、その後東名などの高速道路網が整備され、日本経済の成長を加速させました。
大阪万博にも多くの人がつめかけ、こうした大きな博覧会を開催できる経済大国としての実力を実感しました。
世代論を語るとき、世代の区切り方として、どういう事象を共通体験として保有するかは重要なメルクマールとなります。
分岐点は、1964年の東京オリンピックと1972年の大阪万博です。
この2つの大規模イベントは日本の高度経済成長の象徴として記憶されているからです。
砂利道だった道路は舗装になり、当初は珍しかった自動車が必需品に変わり、道にあふれます。
生活面でも、テレビ、洗濯機、掃除機、冷蔵庫などが瞬く間に家庭に普及します。
池田勇人内閣の「所得倍増計画」の下、給与は毎年確実に上昇していましたから、手元に現金がなくても、月賦で電化製品を購入することにためらいはありませんでした。
日本の世界におけるプレゼンスは日増しに高まり、いつの間にかGDPはアメリカに次いで世界第2位となっていました。
そうした時代ですので、借金をしてオリンピックや万博のような大規模イベントを行っても、その借金は将来豊かになる世代が無理なく返済できるだろうと思われていました。
当時を記憶する年老いた現代の政治・経済の指導層が、オリンピックや万博を誘致して、沈滞している日本を再び元気にしようと考えたのも心情的には分からないではありません。
しかし、それは完全に原因と結果を取り違えています。
オリンピックと万博があったから高度成長になったのではなく、高度成長にあったからオリンピックと万博が輝いたに過ぎません。
誘致以前から、借金により箱モノを建設して、経済を活性化させようとする発想の古さを指摘する声は多くありました。
半世紀前は経済が上り坂だったから、投資の乗数効果は高く、投資が投資を呼び、消費も活性化し、経済を勢いづかせました。
借金は経済成長により担保されていたのです。
しかし、ピーク時世界3位まで上昇した1人当たりGDPが最近は30位程度に落ちているように、今の日本経済は下り坂にあります。
ただでさえ、膨大な国家債務の負担にあえいでいます。
下り坂のいたずらな箱モノ投資は坂道を転げ落ちるスピードを加速するだけだ、という意見は説得力を持ちます。

数年連続で税収過去最高を記録しているのに、生活は一向に良くならないね。
年収の壁は引き上げられるだろうけど、他のところで増税やステルス増税が…。
これからも、景気が悪くなると、イベント開催に伴うハコ物投資で、経済を活性化させようという議論が間違いなく出てきます。
しかし、単発のハコ物投資により、下り坂の経済を反転させることはできません。
そうではなく、何となく将来の経済成長に資するだろうとか、きっと社会を元気させるだろうとかいった漠然とした、不確かな期待に基づく支出は考え物です。
上り坂でのハコ物投資は経済への起爆剤になりますが、現在の下り坂の状況では財政の負担になることを認識した上で行動に移すべきだと言えます。

とはいえ、せっかく開催されるのですから大成功を期待します。
大阪遠いから行かないけどね!

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福岡県春日市・那珂川市の税理士・公認会計士 河鍋 優寛でした。
この記事の執筆者

公認会計士・税理士
大学4年次に公認会計士試験合格後、大手監査法人と税理士法人を経て、河鍋公認会計士・税理士事務所を開業。
資産税(相続税・贈与税・譲渡所得)の実務経験もあることから、会計顧問から資産税までご相談いただけます。
専門分野は会計、税務顧問・IPO支援&相続・事業承継です。