2025.04.11

【新NISA】国内資金の流れにどのような影響を与えるか

今回のコラムは「新NISA」についてです。

日本は低金利が長く続き、金利上昇に脆弱な体質になっています。

第一に巨額の国債を抱えた国家財政は金利上昇の直撃を受けます。

次に、量的金融緩和で大量の低金利の国債を所有している日銀は、金利が上昇すれば、(決算上は表面化しないとしても)保有する国債に多額の評価損を生じます。

また、銀行からの借入で何とか凌いでいる企業も金利が上昇すれば、倒産などが生じるかもしれません。

そして、変動金利の住宅ローンを抱える個人は重くなる返済負担に苦しむことになり、それに伴い低利の住宅ローンに支えられた住宅価格の下落も予想されます。

上記を考えれば、日銀が欧米諸国のように利上げに踏み切れないのも無理のないことのように思われます。

利上げするとしても、できるだけマイルドにしようとするでしょう。

この金融状況をバックで支えているのは、低金利を引き受ける国民の膨大な国内貯蓄です。

ほとんど金利ゼロでも増え続ける国内貯蓄の存在が低金利を維持させているのです。

しかし、この「眠れる獅子」がいつまで眠り続けてくれるか分かりません。

「眠れる獅子」を覚醒させかねない次のような状況があることに注意しなければなりません。

バブル崩壊後長く続いたデフレの時代は、物価が下がるのですから、利息はゼロでも貯蓄の実質的価値は減少せず、かえって増加しました。

預金が最も確実な資産運用ということもできましたが、インフレ時代になると様相を異にします。

モノの値段は上がるのに、預金に利息がほとんどつかない状況では、貯蓄は実質的に目減りをしていきます。

庶民は、ドルをはじめとした海外金利が高くなるのを横目に、ほとんどゼロ金利のままの国内貯蓄を継続することに疑問を感じ始めるようになっていき、そこに新NISAが登場します。

2024年1月から始まった新NISAでは、非課税期間が無期限になり、つみたて投資枠と成長投資枠の合計で年間360万円まで投資できるようになります。

日本人はアメリカなどの諸外国に比べると、貯蓄好きだといわれますが、この新NISAの登場は、貯蓄を大きく動かすインパクトがあるかもしれません。

政府の狙い通り、資金がほどほどに国内株式等に向かえばいいのですが、そこに留まる保証はありません。

金利が高く、成長力も日本より高い海外に一気に資金が向かう可能性もあります。

人によっては、止まらない円安傾向を背景に為替差益狙いということもあります。

その結果、日本の金融緩和の基盤であった国内貯蓄が大きく減少するといった事態に至るかもしれません。

一方、防衛費や生活支援支出の増大で財政の赤字傾向は続きますから、今までのように低金利での国債発行は難しくなります。

これまで金利上昇は、景気が良くなり資金需要が活発化することにより起こると想定されていました

好景気になれば、金利上昇のデメリットを相殺できます。

しかし、景気が悪いまま、資金不足により金利上昇することも頭に入れておかなければなりません。

そうなると、かなり苦しい状況に追い込まれます。

「貯蓄から投資」のスローガンの効力が適当なところに収まればいいのですが、インフレによる貯蓄の目減り効果の後押しを受け、思いのほかに効きすぎると「眠れる獅子」を目覚めさせることになるかもしれないのです。

新NISAが資金の流れにどのような影響を与えるのかに注目したいと思います。

河鍋 優寛

弊事務所では1人1人のお客様に真摯に寄り添い、満足度の高い相続税申告やコンサルティングを実施しております。
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福岡県春日市・那珂川市の税理士・公認会計士 河鍋 優寛でした。

この記事の執筆者

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