
今回のコラムは、最新の税務情報や税制改正項目のうち、経営者に重要なトピックについてご紹介します。
目次(各項目に飛べます)
令和9年度税制改正要望、今回の目玉は?
8月末期限の各省庁の税制改正要望が出そろいました。
今回の目玉の1つが
事業承継税制の抜本見直しです。
具体的な内容は要望からはわかりませんが、事業承継を検討している企業経営者にとっては非常に重要なテーマです。
ここ数年、細かい改正が続いていましたが、今回の改正で大きく見直されると思われます。
また、中小企業向け減税も注目ポイントです。
下記について延長・拡充が要望されています。
- 中小企業の軽減税率
- 中小企業向け賃上げ促進税制
- 中小企業経営強化税制
- 中小企業投資促進税制
- 中小企業防災・減災投資促進税制
- 中小企業の固定資産税特例
- 中堅・中小グループ化税制
- 交際費課税の特例
近年は「対象者」に制限をかける改正が行われていることから、単なる延長ではなく、メリハリのついた改正が予想されます。
そのほか、次の要望も出ています。
・事業ポートフォリオ転換・強化促進税制の創設
※一定のM&Aの事業売却益の課税を繰延べ
・減価償却資産に係る取得価額基準等の見直し
※10万円未満、20万円未満の基準額の引上げ
・地域における生活環境の維持に必要なサービスを確保するための特例措置の創設
※卸小売・ガソリンスタンド・物流などへの登録免許税・不動産取得税・固定資産税の軽減
・家事支援サービスやベビーシッター等の利用に要する費用に係る税制上の所要の措置
※要望からは具体的な内容は不明ですが、例えば、所得税の軽減が予想されます。
▼詳しくはこちらから
経済産業省「令和9年度経済産業省税制改正要望」
https://www.meti.go.jp/main/zeisei/zeisei_fy2027/zeisei_r/index.html
▼政府税制調査会
「第7回 税制のEBPMに関する専門家会合」※中小企業税制について効果が説明
https://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/ebpm/2026/8ebpm7kai.html
「飲食料品消費税率引下げ大綱」が閣議決定
9月15日、政府は「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」を閣議決定しました。
同日、国税庁は「消費税率引下げ特設サイト」を公表しています。
<概要>
期間:令和9年4月1日~令和11年3月31日
対象:軽減税率の対象となっている飲食料品
税率:1%(現行の8%から7%引下げ)
<経過的措置>
(1) 本則課税事業者への移行特例
→届出期限の緩和や簡易課税の2年縛り解除で本則課税となり、還付を受けやすくする特例
(2) 簡易課税制度の特例
→飲食料品の販売は、税額がゼロになる特例
(3) 中間申告制度の特例
→中間申告税額が過大とならないよう、「税率1%」で再計算できる特例
(4) 総額表示義務の特例
→負担軽減のため、税率変更の前後の各2か月間、8%または1%での総額表示を認める特例
(5) 予約販売・通信販売の経過措置
→一定の契約は税率8%のままに
また、農林漁業者や食品・外食事業者の場合は、資金繰り支援や、本則課税へ移行する際の相談対応、税理士費用等の経費に対する支援も予定されています。
2年間の消費税率引下げについてどう対応するか、今から税理士とよく相談しておきたいところです。
また、「就業者負担軽減支援金」は、令和9年4月から「消費税率1%」の範囲内で先行して行われ、飲食料品に対する消費税は「実質ゼロ※」になります。
※税率8%-7%引下げ-1%相当の支援金=0
そして令和11年4月から「所得に応じたきめ細かな給付」として、本格的に支援金制度が導入される予定です。
▼詳しくはこちらから
【PDF】政府「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shouhizei_zeigakukoujo/pdf/sankou4.pdf
【PDF】上記大綱の「概要資料」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shouhizei_zeigakukoujo/pdf/sankou5.pdf
国税庁「消費税率引下げ特設サイト」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/zeiritsuhikisage.htm
「取引相場のない株式」の新方式案への懸念が相次ぐ
9月16日、国税庁は「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の第6回資料を公表しました。
今回は
・残余利益方式(国税庁の新方式案)
・特定の評価会社(新しい区分)
について、さらに議論が行われました。
一方で、国税庁が考える新方式案に対して、懸念を示す動きも出ています。
中小企業庁は意見書の中で、
(1) 事業承継への影響について丁寧に検証・議論すべき
(2) 国の政策的方向性に逆行する見直しとならないこと
と釘を刺しています。
また、日本商工会議所は意見書の冒頭で、「国税庁が考える残余利益方式の採用を是認する趣旨のものでは一切なく、日本商工会議所は、同方式による評価体系の抜本的な変更そのものに反対する立場を堅持している。」と強い反対を示しています。
国税庁から提出される資料も、会計検査院が指摘する「租税回避スキーム」を封じることが最優先課題となり、「結論ありき」の評価方式となっていないか、懸念するところです。
▼詳しくはこちらから
【PDF】国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第6回)資料」
https://www.nta.go.jp/about/council/nai-hyoka/20260916/pdf/06shiryo_kabukaigi.pdf
【PDF】中小企業庁「『取引相場のない株式の評価』見直しに係る意見」
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/2026/260916.pdf
【PDF】日本商工会議所「委員提出意見書」
https://www.nta.go.jp/about/council/nai-hyoka/20260916/pdf/06ikensyo_kabukaigi.pdf
まとめ
令和7・8年度税制改正は、「年収の壁」を巡る【所得税】が主役でしたが、令和9年度税制改正では所得税は一休みで、それ以外の税目が主役となりそうです。
【消費税】
・飲食料品の2年間税率引下げ
【資産税】
・事業承継税制の抜本見直し
・取引相場のない株式の評価の見直し
【法人税】
・中小企業税制
消費税は9月で一定の結論は出ましたが、10月の臨時国会で関連法案が提出され、審議はこれからが本番です。
資産税と法人税については、11月から12月中旬の与党の税制調査会でどのような議論が行われるのか、注目したいところです。
今後も最新の税制改正に関する情報をお届けします。
この記事の執筆者

公認会計士・税理士
大学4年次に公認会計士試験合格後、大手監査法人と税理士法人を経て、河鍋公認会計士・税理士事務所を開業。
資産税(相続税・贈与税・譲渡所得)の実務経験もあることから、会計顧問から資産税までご相談いただけます。
専門分野は会計、税務顧問・IPO支援&相続・事業承継です。