
今回のコラムは「人材開発支援助成金」についてです。
人手不足やデジタル化への対応が求められるなか、従業員の新たな知識・技能の習得は、中小企業の成長に欠かせません。
こうした人材育成を支援する制度として、「人材開発支援助成金」があります。
今回は、人材開発支援助成金のなかでも新規事業への進出やDX推進などに必要な研修費用等の負担を軽減できる、「事業展開等リスキリング支援コース」の概要や申請手続きについて解説します。
目次(各項目に飛べます)
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)とは
人材開発支援助成金は、事業主が従業員に職務に関連する訓練を実施した場合、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。
そのなかでも「事業展開等リスキリング支援コース」では、新規事業の立ち上げやDX推進などに伴い、新たな分野で必要となる専門知識・技能を習得するための訓練を支援しています。
1.支給対象
主な支給対象となる事業主と労働者の条件は、次のとおりです。
・事業主:雇用保険適用事業所の事業主
・労働者:雇用保険の被保険者
2.対象となる訓練
助成対象となる訓練は、次の3つの条件を満たす必要があります。
(1)訓練時間数が10時間以上であること
(2)OFF-JT(通常業務から離れて実施する研修・講習など)であること
(3)職務に関連し、次のいずれかに該当すること
・新規事業の立ち上げなど、事業展開に必要な専門知識・技能を習得する訓練
・社内のデジタル化・DX推進や脱炭素化に必要な専門知識・技能を習得する訓練
・企業の人事・人材育成計画に基づき、今後担当する職務に必要な専門知識・技能を習得する訓練など
例えば、新たな事業で使用する機械の操作研修や、DX推進に向けたデジタル技術の習得などが挙げられます。
3.助成率・助成限度額
(1)助成率・助成額
訓練にかかった経費と、訓練期間中に支払った賃金の一部が助成されます。
【中小企業】
・経費助成率:75%
・賃金助成額:1人1時間当たり1,000円
【大企業】
・経費助成率:60%
・賃金助成額:1人1時間当たり500円
また、中小企業では一定の要件を満たして対象設備を導入した場合、導入費用の50%を助成する「設備投資加算」も利用できます。
(2)受講者1人当たりの経費助成限度額
訓練時間に応じて、次の上限額が設定されています。
【10時間以上100時間未満】
・中小企業:30万円
・大企業:20万円
【100時間以上200時間未満】
・中小企業:40万円
・大企業:25万円
【200時間以上】
・中小企業:50万円
・大企業:30万円
▼詳細は以下のリンクをご確認ください。
(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
助成金受給のための手続きの流れ
助成金を受給するには、次の手順で手続きを進めます。
(1)職業訓練実施計画等の提出
訓練開始日の6か月前から1か月前までに、「職業訓練実施計画届」や「事業展開等実施計画」などの必要書類を管轄労働局へ提出します。
(2)訓練の実施
提出した計画に基づいて訓練を実施し、受講状況や賃金の支払い記録などを適切に管理します。
また、支給申請までに訓練経費の全額を支払う必要があります。
(3)支給申請
訓練終了日の翌日から2か月以内に、支給申請書や訓練実施状況を確認できる書類などをそろえ、管轄労働局へ申請します。
まとめ
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)は、新規事業への進出やDX推進に必要な人材育成を支援する制度です。
中小企業では訓練経費の75%が助成されるほか、賃金助成や設備投資加算も用意されています。
活用には訓練開始前の計画提出が必要なため、自社の経営課題や育成方針を整理し、計画的に準備を進めましょう。
この記事の執筆者

公認会計士・税理士
大学4年次に公認会計士試験合格後、大手監査法人と税理士法人を経て、河鍋公認会計士・税理士事務所を開業。
資産税(相続税・贈与税・譲渡所得)の実務経験もあることから、会計顧問から資産税までご相談いただけます。
専門分野は会計、税務顧問・IPO支援&相続・事業承継です。